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ケミカルな日々主観的なバケガク辞典
◆実験器具&実験装置
ビーカー[beaker]
 円筒形の汎用容器。10mLから10Lまである。実験器具といえば最初に挙がるであろう器具のひとつだが、正直ただのビン。弱点は注ぎ口で、ここを破損すると注ぎづらくなって困る。基本的に容量の大きいものほど高く、そして割れやすい。目盛りが振ってあるものの、あまり正確では無いが、合成実験時には問題ない。姉妹品に口がすぼまったコニカルビーカーや背が高いトールビーカーなどがある。金属製、PET製、ホーロー製もある。100mLが一番安く400円くらいだが、10Lは受注生産なので2万円以上するようだ。
三角フラスコ[conical flask]
 ガラス製、円錐の先に口がついた汎用容器。エルレンマイヤーフラスコとも。時間割表の理科の欄には良く書いてある。ビーカーに比べて底が広く口が狭いため、倒れにくかったり溶液が気化しにくかったりするが基本的にはビーカーと同じ用途。フラスコ族に共通することだが、口が狭いので中が洗いにくい。小さいものは可愛らしいがビーカーの様に重ねられないので大きいものはとても邪魔。目盛りは適当極まりないので全然あてにならない。やっぱり良く割れる。
丸底フラスコ[round-bottomed flask]
 3種類実験器具を描いて、と言われたら10人中9人が描くであろうアイテム。底が丸く、座りが悪いのでスタンドと仲良し。ゴム栓をすれば蒸留などにも使えるが、容量の半分以上液体を入れて加熱すると危険。それで中学の頃500mLを1回割ったことがあるが、大学の実験室ではあまり見かけないのでもう破壊することは無いだろう。よく覚えていないが目盛りは無かったような気がする。中が洗いにくいという致命的な欠点を抱える。底が平らな平底フラスコというものもある。
サンプル瓶[vial]
 ガラス器具の中ではその他大勢的な存在。円柱状で、プラスチックのフタで密閉することが出来る。安価なので大量に容器が必要になるカラムクロマトグラフ分離時や化合物の保存、再結晶の際に便利。仮に落として割ってもあまり惜しくは無いが、それは中身によりけりである。何週間もかけて作った物質が失われるとかなりやるせない。容量は5mL〜50mLが一般的。
ナス型フラスコ(すりつき)[egg-plant flask]
 口にすりがついているフラスコで、形が茄子に似ているところからこう呼ばれている。そのままだと転がってしまうので、ナス台(ナス置き)と呼ばれるコルクやプラスチック製の台が必要。すりがついているので真空系での合成や反応、ロータリーエバポレーター(減圧して溶媒を飛ばす装置)を利用しての濃縮などに使える。容量は50mL〜3(5?)Lくらいまであり、容量が大きくなるほど高い。50mLを割った時に3000円以上すると聞かされてびびった。すりの無いものはもっと安いようだが……。姉妹品にナシ型フラスコというものもあるらしい。
薬さじ[spoon]
 粉末や粒状の薬品を測りとる時に使うスプーン。両端が大小のさじになっている。少量の場合はスパチュラを用いることもある。ステンレス製かプラスチック製で、プラスチック製はどれも薬品に汚染されてボロボロになっている気がする。酸に弱いという欠点を持つが落としても割れないという最強の利点を持つ。残念ながら食事には使えない。
スパチュラ[spatula]
 奇怪な名前だが、ステンレス製の耳掻きのような細さじ。微量の試薬を量りとる幅が5mmくらいの小さなさじの反対側はヘラ(スパチュラの和訳がヘラ)の様になっており、ガラス壁にへばりついた生成物を剥がすのに便利。また、ある程度自由に曲げられるので、フラスコのような面倒な形状の容器の痒いところにも手が届く。ぞんざいに扱っても割れないのが魅力。
リービッヒ冷却管[Liebig condenser]
 主に蒸留に使う冷却管。液体を入れて加熱するフラスコなどの先につなげて使う。冷却水が通るガラス管の中を加熱されて気化した液体が通る二重構造になっている。冷却水は下から入れて上から出さないと冷却効果が上がらない。長さにも拠るが2500円くらい。ドイツの有機化学者ユストゥス=フライヘア=フォン=リービッヒの名がついているので、おそらく彼が考案したものだろう。
ジムロート冷却管[Dimroth condenser]
 還流(熱反応の際に、気化した溶媒の通り道を冷やして凝集させ、溶媒を失わないようにする操作)のときに用いる冷却管。通称うずまき還流管。ガラス管の内部に冷却水が流れるガラス管(上部から注水し、下部までまっすぐ下にガラス管が伸び、その管を巻くように螺旋を描いて登って上部から排水)になっているので外気と水の2つで冷やされ、冷却効率が良い。が、構造が複雑なため非常に洗いづらい。7000円弱。
メスシリンダー[graduated cylinder]
 円筒形の溶液体積測定用器具。10mLから1000mLくらいまであり、大体容量の1/100おきに目盛りが振ってある。体積測定器にしては誤差が大きい(1%前後)が、一応精密測定が可能なので乾燥機には入れられない。よって干しておく時はジャマな存在。
メスフラスコ[volumetric flask]
 溶液体積測定用の器具。メスシリンダーが任意の容積を量れるのに対して、メスフラスコは容器ごとに決まった体積のみをはかり取ることが可能。主に、濃度のわかっている液体をホールピペットなどで量り入れ、標線まで溶媒を入れて溶かす(定溶という)のに用いる。容積は5mL〜2Lくらいまである。芽の出た球根のような形で、底面積が小さいわりに背が高いので、うっかり倒れることが多い。ネジ式かスリ式の蓋がついており、定溶した後は栓をして良く振らないと濃度が一定にならない。誤差を小さく抑えるため、使用、保存は一定温度(25℃)で行なうのが望ましい。
温度計[thermometer]
 溶液の温度を計る、液体温度計。普通のご家庭にある0〜100℃のものや、200度くらいまで計れるもの、マイナス100度まで計れるものなど色々ある。温度条件が微妙な合成や、蒸留などの際に重要となる。でも慣れてくると温度は大体カンで判る。また、ガラス棒のように扱われることもある。中学生は振って温度を下げようとして机に叩きつけて折る。
クロマトグラフ管[chromatographic column]
 カラムクロマトグラフィーやイオン交換を行なうための管。シリカゲル粉末やイオン交換樹脂などを詰めて使用する、直径2cmや3cmのガラスの管。先は細くなっており、コックがついて出水量を調節できる。クロマトグラフィーとは、複数の物質の混合物をゲルなどに定着させ、展開溶媒を流すことで親水/疎水性の差によるリテンションの違いで物質を分けとる手法。シリカゲルは親水性(乾燥剤として使われるように、水をくっつけやすい)なので、親水性のものを吸着しやすく、疎水性(親油性)のものを吸着しにくい。仮に、餃子のタレ(醤油とラー油)を定着させてサラダ油で流すと、ラー油だけが流れ落ちてくる、ようなイメージ。現実的な例としてはティッシュに黒のサインペンで印をつけて端から水を吸わせるとインクがいろんな色に分かれるのと原理は同じ。
ガラス撹拌棒[glass stirring rod]
 基本的にはマドラー。カラフルさも相俟ってカクテルと間違えてしまいそうだが、ステアする相手は急性何中毒かの違いはあるものの、ほぼどれを飲んでも病院送り(かあの世行き)。何かを掻き混ぜたり、ビーカーから漏斗へなど溶液を垂らさずに移したり、pHを調べるためにpH試験紙に1滴溶液を垂らすときに便利。超低温(液体窒素など)下での使用は温度差で砕けることがあるので避けたほうがよい。よ〜く見ると目盛りがついていたりして、温度計の成れの果てだということもあるが、そこは気づかないであげるのが大人。
時計皿[watch glass / watch dish]
 少し屈曲した円形のガラス板。馬鹿でかいコンタクトレンズと言えば想像しやすいだろうか。撹拌時にビーカーの蓋として使ったり(過熱時に気化した溶媒が時計皿の表面を伝って中央から落ちるよう、凸面を下向きにして使う)、結晶や試薬の溶解度を確かめるためのパレットとして使ったり、pH試験紙で溶液のpHを調べる時の皿に使ったりする。直径3cmから30cmくらいまである。2枚合わせて中に水を入れると凸レンズとしても使える(使えないことも無い)。何ゆえ時計皿という名前なのかは謎だが、どうやらwatchを時計と誤訳してしまったという説が有力なようだ。
ホットプレートスターラー[hot plate stirrer]
 ホットプレート機能つきスターラー。スターラーとはホーローの台の下で永久磁石がくるくる回り、それに応じてビーカーやフラスコの中の撹拌子(磁石をテフロンでコーティングしたもの)が回ることによって溶液を撹拌することができる装置。ホットプレートスターラーは台の中にニクロム線が入っており、300℃程度まで加熱することが可能。
撹拌子[magnetic spinbar]
 酸や薬品に冒されないよう、磁石をテフロンでコーティングしたもの。磁力でくるくる回って溶液を撹拌させる。棒状のものから十字の形をしたものなど、いろいろなサイズ、形がある。ガラス棒が入れられない環境(真空系)などで溶液を外側から混ぜる時にも使える。
超音波洗浄器[ultrasonic cleaner]
 眼鏡屋の前に置いてあるアレがなんとあなたの実験室にも! ということで、水を張った金属層が超音波的に振動することで汚れを取ることができる装置。容器の底にこびりついた物体や溶けにくい試薬や、結晶のような溶けにくいものを溶かすのに使える。また、『すり』の部分が何かの拍子にくっついてしまったときなどに外すのにも使える。溶液が少ない状態で超音波に晒すと容器が共振して局部的に破壊されることがあるので注意。眼鏡を洗ったことは無い。多分実験装置というカテゴライズは間違ってる。
ドラフト[draft]
 引く、という意味どおり、空気を吸い込むことで室内に有害なガスが充満しないようにする機能を持った実験台。ガラス製のシャッターを下ろすことでさらに有害なガスが室内に入り込まないようにすることができる。実験装置というよりは設備か。
パスツールピペット[Pasteur pipet]
 直径1cm弱のガラス管の片側を伸ばして細くしたもの。ピペッターをつけて、スポイトとして使う。先が細いので溶液を残さず吸い取れるが、折れやすい。数百本いくらのその他大勢的な存在。落として割っても、まぁいいか……と思ってしまえる。溶液を移す(パス)道具(ツール)だからパスツールではない。キラル(鏡像異性)分子を発見したフランスの生化学、細菌学者ルイ・パスツールにちなむ。
メカニカルスターラー[mechanical stirrer]
 普通のスターラーと攪拌子では混ぜきれないほど容器または内容物の粘性が大きい場合、または沈殿の多いものを攪拌する場合、磁力を使うのではなく、モーターの力を借りる。メカニカルスターラーはスタンドに設置し、下に攪拌翼つけてモーターで回転させる。rpm(1分あたりの回転回数)が表示されるものもある。垂直に装置をセットしないとrpmが300を越えたあたりから振動が激しくなって危険。
撹拌翼[mixing wing]
 メカニカルスターラーを使う時に使う攪拌用具。金属やテフロンのプロペラで、モーターで回転力を得てフラスコの中身などを攪拌する。種類は多々あるが、代表的なものは羽根が固定されておらず、遠心力で広がるので、フラスコに入れるときは細く入れやすい。
ロータリーエバポレーター[rotary evaporator]
 訳すと回転式減圧蒸発装置。すりつきのナスフラスコやゴム栓をつけたサンプル瓶などを回転させながら湯浴や油浴で加熱し、真空ポンプで減圧することで沸点を下げることで素早く溶媒を気化させることができる。何故回転させるかというと、蒸発は基本的に表面でしか起こらないので、オイル状のものなど粘性の高い物質中にある溶媒を飛ばす場合は回転させて内容物を混ぜた方が速く蒸発させることが出来、また回して混ぜることで突沸を避けることができるためである。ロータリーエバポレーター、なんだか必殺技のようなクールな名前だが、長ったらしいのでエバと略されることが多い。筆者も記録をつけるときはRotEvaと略す。
三ツ口フラスコ[three-neck flask]
 丸底フラスコの口の左右に口がついた、ステキなフラスコ。3つの口全部に密閉可能なすりがついているので割ってはならないお値段となっている(0が4コついたりする)。密閉系で還流を行なったり、撹拌しながら試薬を滴下する時などに使う。真中の口にメカニカルスターラーをつけて掻き混ぜながら、左右の口に還流管をつけたり、分液漏斗をつけて試薬を滴下したりする。50mL〜5Lくらいまでが一般的。小さいものを加熱するときはオイルバス、大きいものを加熱する時はマントルヒーターを用いる。
マントルヒーター[mantle heater]
 三ツ口フラスコをすっぽり収めることができるヒーター。電熱線が張り巡らされており、家庭用交流電源を繋げることで加熱できるが、電圧調節機能はないのでスライダーと呼ばれる調圧装置が必要となる。また、耐熱繊維で編まれているので外側は熱くならないが、漏電はするので濡らさないように注意する必要がある。知る限り、500mL用から5L用まではあるようだ。マジックテープで着脱可能な三角フラスコ用のものもある。
漏斗[funnel]
 ガラスやPET製の、上が広く下がすぼまっている器。一般的には『じょうご』だが、化学の分野ではロートという。底に穴が空いており、口の狭い容器に物を移すのに使う。
分液漏斗[separatory funnel]
 ケーキの飾り付けに使うホイップクリームを絞る袋みたいな形状のガラス器具。下はコックで流出量を調整でき、上はすりガラスの蓋がついていて密閉できる。混ざり合わない2種類の液体(例えば水とクロロホルムなど)を使って混合物(水に溶けやすいものと油に溶けやすいもの)を分離するのに使う他、コックで流出量を調整できるので反応溶液に試薬を少しずつ滴下するのにも便利。洗いづらい器具選手権優勝候補。
分液漏斗[separatory funnel]
 円錐形のフォルムの、ケーキの飾り付けに使うホイップクリームを絞る袋みたいな形状のガラス器具。下はコックで流出量を調整でき、上はすりガラスの蓋がついていて密閉できる。混ざり合わない2種類の液体(例えば水とクロロホルムなど)を使って混合物(水に溶けやすいものと油に溶けやすいもの)を分離するのに使う他、コックで流出量を調整できるので反応溶液に試薬を少しずつ滴下するのにも便利。洗いづらい器具選手権優勝候補。
ビュレット[buret,with stopcock]
 中和滴定に使う細長い筒。先にはコックが付いていて流出量を調整でき、筒には精密な目盛りが振ってあり、どれだけ滴下したかが判るようになっている。これに濃度の判っている酸などを入れ、濃度の判らない塩基を中和していき、中和された時点で滴下した酸の量から塩基の濃度を計算で求めることができる。
◆溶媒
水[Water:H2O]
 地球上に最も多く存在する、最も基本的な溶媒。分子量18.0。融点0 ℃、沸点100 ℃。温度、比重など、水の性質から作られた物理的基準も少なくない。中性では10-7 mol/l 程度が水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に電離している。紫外〜可視光に吸収を持たないため、分光化学ではわりと一般的な溶媒だが、合成化学ではどちらかと言うと反応の邪魔をして嫌われる存在。というのも、有機合成などで脱水縮合と言う反応を用いる場合、副生成物として水が発生する。この反応は可逆的である場合が多く、水があればあるほど縮合した生成物が逆に原料に戻ってしまう(加水分解という)。実験室では水道水、脱イオン水、蒸留水、超純水の順に純度と値段が上がるが、純度が上がると塩素による消毒効果が無くなるので雑菌が沸きやすく、飲料には適さない(誰も飲まないが)。
ベンゼン[Benzene:C6H6]
 融点6 ℃、沸点80 ℃。特有の臭い(芳香臭という)を持つ透明の液体。第四種危険物第一石油類。六角形の頂点に炭素が配置され、対角線の延長上に水素を置いた形の分子。無極性で水とはほとんど混じらない。インク消しなどに使えるが、家具などの塗装を溶かすので取り扱いには注意が必要。非常に安定な物質で代謝されにくく、体内に取り込まれると長期間残留し、発癌性を有する。
トルエン[Toluene:C6H5CH3]
 融点-93 ℃、沸点111 ℃。特有の臭い(芳香臭という)を持つ透明の液体。第四種危険物第一石油類。ベンゼンの水素の一つがメチル基(CH3)に置き換わったもの。別称メチルベンゼン、フェニルメタン。安定で高温にも耐え、疎水的なので有機合成時には非常に有用な溶媒。不良中学生とかが袋に入れて吸って補導されるという風習がある。吸入すると普通気分が悪くなるが、それでも頑張って吸い続けると大層気分が良くなるのだとか。長期に渡って悪用すると歯が溶けたり脳味噌が萎縮したりと身体に致命的なダメージをうけるようだ。ベンゼンよりは代謝されやすく安全、という話を聞くが相対的には安全でも絶対的には危険。
硫酸[Sulfuric acid:H2SO4]
 溶媒といって良いのかわからないが、化学の教科書にはプロトン性溶媒(電離してH+を出す溶媒)として扱われている。不揮発性、粘性の高い液体で強力な脱水作用、吸湿作用を持つ。水と触れると発熱する。強酸の代表選手。かつてある人が硫酸を見て「すごーい! これ手とか溶かすやつでしょ!?」という発言をしたことがあるが、実験室でそういう用途に使うことはあまり無い。
エタノール[Ethanol:CH3CH2OH]
 エチルアルコール。EtOHと略すことも。和名は酒精。わりと一般的な有機溶媒。オトナが(子供も?)大好きな液体だが、蒸留しても数%水分が混ざってしまう(共沸という)。実験用のものは水分を除去するためにベンゼンを用いている場合があるので、飲む場合は確認が必要である、というか飲んではならない。
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